先日、あるプロジェクトでクライアント側の担当者が3人いて、それぞれから別々のタイミングで修正要望が届いたことがありました。1人はメールで、1人はチャットで、もう1人は電話口で「あそこ、ちょっと直しといて」。私はそれぞれをその都度デザイナーに転送してしまい、結果として同じ箇所に矛盾した指示が重なり、2度も手戻りをさせてしまいました。
このとき痛感したのは、修正依頼で本当に大事なのは「1件をどう伝えるか」ではなく、バラバラに届いた要望をどうまとめてから渡すかだということです。世の中の修正指示のコツを紹介する記事の多くは、この「まとめる」工程にはあまり触れていません。今回は、私が現場で身につけた「まとめ方」の視点を整理してお伝えします。
修正依頼が散らかる3つの原因
複数の関係者からバラバラに届く
クライアントが複数人いたり、社内の営業・カスタマーサポートからも要望が上がってきたりすると、同じ案件について複数の情報源が並行して存在する状態になります。誰か1人が全体を把握していないと、同じ箇所への指示が重複したり、逆に抜け落ちたりします。
優先順位が誰にもわからない
要望を受け取った順にそのまま流してしまうと、本当に急ぎの修正と、余裕があるときで良い修正が同列に並んでしまいます。制作側は「どれから手をつければいいか」が分からず、結局全部を並行して着手し、進捗が見えにくくなります。
目的が抜け落ちたまま要望だけが伝わる
「ボタンの色を変えてほしい」という要望だけが伝わり、「なぜ変えたいのか」が抜けていると、制作側は正しい判断ができません。目的が分かれば、指示された方法よりも良い代替案が出てくることもあります。
Webディレクターの「まとめ方」3つの視点
修正依頼をまとめる作業は、単なる事務作業ではなく、ディレクターの調整力が問われる仕事だと私は考えています。現場でよく使っているのが、次の3つの視点です。
視点1:集約する(声を1箇所に集める)
まず、メール・チャット・口頭など、あらゆる経路で届いた要望を1つの場所(スプレッドシートやタスク管理ツールなど)に集めます。届いた順にそのまま右から左へ流すのではなく、一度すべてを受け止めてから整理に移る、というワンクッションを意識的に入れることが重要です。
視点2:整理する(ページ・優先度・担当で分類する)
集めた要望を、ページ単位・優先度・対応する担当者(デザイナーかコーダーか)で分類します。同じページに関する要望はまとめて渡すことで、制作側の手戻りや確認の往復を減らせます。
視点3:翻訳する(曖昧な要望を制作側の言葉に変換する)
「もっとおしゃれに」「なんとなく見づらい」といった主観的な言葉は、そのまま渡しても制作側は動けません。ディレクターが間に入り、目的や意図を確認したうえで、制作側が判断できる言葉に変換することが必要です。この「翻訳」の役割こそ、ディレクターの腕の見せどころだと私は思っています。
修正依頼リストの作り方【実践フォーマット】
最低限入れたい5項目
修正依頼リストには、最低限次の5項目を入れることをおすすめします。
- ページ・箇所(どこの修正か)
- 修正内容(具体的に何をするか)
- 目的(なぜ必要か)
- 優先度(高・中・低など)
- 期限
フォーマット例
| No | ページ・箇所 | 修正内容 | 目的 | 優先度 | 期限 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | トップ/メインビジュアル | キャッチコピーを変更 | 訴求軸をリニューアルに合わせるため | 高 | 6/10 |
| 2 | 会社概要ページ | 電話番号の誤植修正 | 誤情報の是正 | 高 | 即日 |
| 3 | サービス紹介ページ | ボタンの色をコーポレートカラーに変更 | ブランドイメージ統一のため | 中 | 6/15 |
スプレッドシートやNotionなど、普段使い慣れているツールで構いません。大切なのは形式そのものより、この5項目が揃っているかどうかです。
まとめる際に気をつけたい3つのポイント
主観的な表現は客観的な指示に置き換える
「ダサいので直して」ではなく、「ブランドカラーの#336699に近づけたい」というように、誰が読んでも同じ理解ができる表現に言い換えてから依頼リストに載せます。
優先順位の決め方
私が現場でよく使う基準は、「公開に影響するか」「ユーザーの利益に関わるか」「対応コストが小さいか」の3つです。この3つのうち、当てはまる数が多いものから優先度を上げるようにしています。
「全部盛り込まない」勇気を持つ
要望をすべて集約すると、つい全部そのまま依頼リストに載せたくなりますが、スケジュールや予算には限りがあります。「今回は見送る」という判断をリストの中に明記しておくことも、まとめ方の一部です。要望を無視するのではなく、「検討したうえで見送った」ことが伝わる形にしておくと、後々の認識のズレを防げます。
まとめ
修正依頼をうまく回せるかどうかは、指示の文章力よりも、バラバラに届いた声を「集約」「整理」「翻訳」できるかにかかっています。そもそも要件定義の段階で認識をしっかり揃えておくことも、修正依頼を減らす近道です。今回紹介したフォーマットや視点を、ぜひ次の案件から取り入れてみてください。

ディレ和尚のひとこと
声はまとめてこそ力となる。バラバラのままでは、ただの雑音なり。



