Webサイト制作の現場で、私が一番ヒヤッとした瞬間は「デザインもコーディングも準備万端なのに、肝心の原稿だけが来ない」という状況でした。
納期は迫っているのに、クライアントからの返信は「もう少し待ってください」の一言だけ。催促のメールを送るたびに、関係がぎくしゃくしていくような気がして、結局その案件はスケジュールを丸ごと組み直す羽目になりました。
今振り返ると、あのとき私がやるべきだったのは「原稿が来るのを待つこと」ではなく、「原稿が来ない前提で、進める方法を考えること」でした。この記事では、そんな失敗から学んだ、原稿待ちで制作を止めないための実践的な対処法をお伝えします。
なぜ「原稿が来ない」はWeb制作の現場でよく起こるのか
クライアント側の事情
クライアントの多くは、文章を書くことを専門にしていません。「何を書けばいいか分からない」「業務が忙しくて後回しになる」「書き始めても、これで本当にいいのか不安になって手が止まる」——理由はさまざまですが、共通しているのは悪気があって遅らせているわけではない、という点です。
制作側の設計不足
一方で、制作側にも原因があります。「いつまでに」「どのページの分を」「どんな形式で」用意してほしいのか、最初の段階で具体的に伝えられていないケースは意外と多いです。ふわっと「原稿をお願いします」とだけ伝えても、クライアントは何から手をつけていいか分かりません。
原稿が来ないときにまず持つべき3つの判断軸
原稿待ちで手が止まったとき、私は次の3つの軸で状況を整理するようにしています。
| 判断軸 | 見るべきポイント |
|---|---|
| ①理由の見極め | 単なる後回しか、そもそも書けずに困っているのか |
| ②進行の継続 | 原稿が揃うまで、他に進められる作業はないか |
| ③伝え方 | 催促が「圧」にならない言い回しになっているか |
①止まっている理由を見極める
「忙しくて後回し」なのか、「何を書けばいいか分からず困っている」のかで、対応はまったく変わります。前者なら締切のリマインドで十分ですが、後者なら、こちらから項目ごとの見出しや文字数の目安、簡単な記入例を渡すだけで一気に進むことがあります。
②全部揃うのを待たず「仮テキスト」で進行する
原稿がすべて揃うのを待ってからデザインやコーディングに入る必要はありません。ダミーテキストや箇条書きの仮原稿でレイアウトを先に固めておき、原稿が届いた時点で差し替える進め方にすれば、制作工程そのものを止めずに済みます。
③催促は角を立てない伝え方にする
「まだですか」という直接的な催促は、クライアントを追い詰めるだけで逆効果になりがちです。私は「〇〇の部分だけでも箇条書きでいただければ、こちらでレイアウトに合わせて整えます」というように、相手の負担を減らす提案とセットで伝えるようにしています。
制作を止めないための具体的な進め方
ダミーテキストでの先行制作
トップページや各下層ページの構成が固まっているなら、仮の文章量で先にデザインとコーディングを進めてしまいます。原稿が届いてから文字数調整をする方が、ゼロから待つより結果的に早く公開まで到達できます。
ページ単位で優先順位をつけて部分的に進行
すべてのページの原稿が同時に揃うことはまずありません。会社概要やお問い合わせなど、原稿が固まりやすいページから着手し、サービス紹介など内容が変動しやすいページは後回しにする、という優先順位づけが有効です。
スケジュールの見直しをクライアントにどう伝えるか
原稿の遅れが長引く場合は、早めにスケジュールへの影響を共有しましょう。「このままだと公開日が〇日ずれる可能性があります」と事実ベースで伝え、対応策(仮テキストでの先行公開など)もあわせて提案すると、クライアントも状況を受け止めやすくなります。SlackやChatworkのようなビジネスチャットで進捗ややり取りを一元化しておくと、後から「言った・言わない」にもなりにくく、催促のタイミングも管理しやすくなります。
原稿遅延を未然に防ぐための事前設計
原稿待ちへの対処と同じくらい大切なのが、そもそも遅延が起きにくい仕組みを最初に作っておくことです。ヒアリングの段階でどこまで踏み込んで聞いておくべきかについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

締切と提出フォーマットを最初に決めておく
「〇月〇日までに、Wordファイルまたは箇条書きテキストで」というように、締切と提出形式を具体的に指定しておくだけで、原稿待ちの発生率はぐっと下がります。
まとめ:原稿待ちも「進行の一部」として設計する
原稿が来ないことを「クライアントの問題」として捉えている間は、プロジェクトは止まったままです。原稿待ちも制作進行の一部として、①理由を見極め、②止めずに進む方法を用意し、③関係を壊さない伝え方をする——この3つを意識するだけで、現場の景色は大きく変わります。
ディレ和尚のひとこと
待つ時こそ、手を動かせ。止まった時間も工程のうちなり。


