先日、クライアントとの定例で、ある指摘を受けました。
「この提案、先週のとほぼ同じ内容ですよね?」
一瞬、頭が真っ白になりました。確認すると、先週の議事録をAIに要約させ、そこから構成案のたたき台を作らせ、私はそれに軽く手を入れただけで提出していたのです。先週と論点が変わっていないことに、自分自身が気づいていませんでした。
ぞっとしたのは、ミスそのものより、「あれ、最近ちゃんと自分の頭で考えてたっけ?」と思ってしまったことです。
AIを使い始めてから、作業は確実に速くなりました。議事録の要約も、構成案のたたき台も、ものの数分で出てきます。便利さに慣れきって、いつの間にか「AIに聞く」が思考の入り口になっていたのだと思います。
この記事では、私が判断力の鈍りに気づいた3つのサインと、そこから立て直すためにやったことをお話しします。
判断力が鈍っていた3つのサイン
振り返ってみると、兆候はもっと前から出ていました。当時は気づいていませんでしたが、いま思えば分かりやすいサインだったと感じます。
①「とりあえずAIに聞く」が思考の初手になっていた
以前は、何か考えるとき、まず自分の頭の中で「たたき台」を作ってから、必要に応じてAIに壁打ちしてもらっていました。
それがいつの間にか、白紙の状態からいきなりAIに聞くようになっていました。「これについてどう思う?」と投げて、返ってきた答えをベースに考える。一見効率的に見えますが、最初に自分の仮説を持たないまま話を進める癖がついていたのです。
②AIの提案を”検証せず”に通していた
AIの出力は、たいてい滑らかで説得力があります。だからこそ、「まあ、これでいいか」と流してしまいやすいのが怖いところです。
冒頭の失敗も、まさにこれでした。AIが作った構成案が「先週と論点が変わっていない」ことに、提出前の自分が気づけなかった。もっともらしい答えほど、疑わずに通してしまうという落とし穴に、はまっていました。
③自分の言葉で説明できなくなっていた
一番深刻だったのは、これかもしれません。AIが作った提案を、クライアントに「なぜこの構成にしたのか」と聞かれたとき、一瞬言葉に詰まったことがありました。
自分で考え抜いていない提案は、自分の言葉で語れません。説明に詰まる瞬間が増えてきたら、それは思考を人任せにし始めているサインだと、いまは思います。
立て直すためにやった3つのこと
サインに気づいてから、私は次の3つを意識するようにしました。特別なことではありませんが、地味に効いています。
1. AIに聞く前に、30秒だけ自分の仮説を書く
どんなに雑でもいいので、「たぶんこうだと思う」を先にメモしてから、AIに投げるようにしました。自分の仮説とAIの答えを比べることで、初めて”検証”という行為が生まれます。
2. AIの提案に、必ず一つは疑問を持ってから使う
「本当にこれで合っているか」「見落としている前提はないか」を、提出前に自分に問いかける一手間を挟むようにしました。自分の判断や思考の軸を持ち続けることが、納得感のある成果物につながると実感しています。
3. 週に一度、AIを使わずに考える時間を作る
議事録の要約もたたき台作りも、あえて手を動かして自分でやる時間を、週に一度だけ確保するようにしました。エンジンを錆びさせないための、いわば筋トレです。
なお、「そもそもどの業務をAIに任せていいのか」という切り分け自体に迷う方は、以前書いた「WebディレクターのAI活用、任せていい仕事の見極め方」で判断軸を整理していますので、あわせて読んでみてください。

AIを「思考の代わり」ではなく「思考の壁打ち相手」にする
AIを使うこと自体は、何も悪いことではありません。問題は、AIに答えを求めることと、AIに考えることを任せることを、無自覚に混同してしまうことだと思います。
私は今も日常的にAIを使っています。ただ、以前より一つだけ変えたことがあります。それは、「AIが出した答えを、自分の言葉で説明し直せるか」を、提出前の最終チェックにしていることです。
説明し直せないなら、それはまだ自分の判断になっていない。そう考えるようにしてから、AIとの距離感が少し健全になった気がしています。
ディレ和尚のひとこと
楽を知るほど、己の頭で考える力を忘れるべからず。



